講演会でもいつも言っていますが、
長い教師生活の中で、
「子どもにはみんないいところがある」
ことを
子どもたちから教えてもらいました。
宝物ファイルプログラムの原点です。
そして、そのためにまず大切なのは、
子どもの話をよく聴くことだと思うのです。
今日は、忘れられない新採用時代(34年前ですっ)の話から。
それは、遠足の時の出来事でした。
(今は、校外学習という名前になっている学校もあります。
あなたのお子さんの学校はどうでしょうか?)
私の時もそうでしたが(何年前だ~?)、
遠足の日って、
子どもたちはとても楽しみにしているんですよ。
おやつに何を買ったとか、
おにぎりは何個にするとか、
教室で子どもたち同士よくしゃべっているものです。
楽しみにしていた遠足の日。
その日は、
バスに乗って子どもたちと
福井県の芝政ワールドという所に行きました。
その名の通り、
見渡す限り芝生が一面に広がっている、
広い広い場所。
遊び場はたくさんあります。
芝が続く場所から少し下りると海があり、
砂浜が何百m続いている。
そんなステキな所でした。
お弁当の時間が過ぎて、
午後の遊びの時間も終わり、
帰りの集合の時間となりました。
ピィーーーッ!!
笛を吹き、
「さあ、後始末をして二列に並びましょう!」
子どもたちは、自分敷物を片づけたり
周りのごみを拾ったりして
リュックをかついで集まってきます。
その時です。
あれ?
一人足りない!?
えっ、どこに行ったの?
ゆうこさん(仮名にさせていただきますね)が
まだ来ていません。
芝生の所を見渡しても
ゆうこさんの姿は
見えません。
えっ、どこにいるの?
今度は、砂浜の方を見渡しました。
すると、
150m位遠くから、
こっちに向かって
走ってくる子の姿が見えました。
あの走り方は
ゆうこさんにちがいありません。
少しずつ近づいてくる
ゆう子さん。
「おーい、
集合場所はここだよーっ、
早くおいでよーっ!」
ゆうこさんは
さらに一生懸命走ってきます。
走って、走って・・・
息せき切って一目散に
私のところに
走って来たゆうこさん。
私は、
「こら、集合時間は守りなさい。」
と叱ろうとしました。
すると
それより前に
息を弾ませながら、
「先生、
これ、
あげる!!」
と言って、
ゆうこさんは固く握りしめていた右手を
ぱっと開きました。
そこには、
ピンク色をしたかわいい貝殻が一つ。
「先生に、
あげようと思って。
きれいな、
貝殻を、
あげようと思って。
それで、
探してたら、
遅くなってしまって。」
息をはあはあさせながら
話すゆうこさん。
「ありがとう・・・」
叱れませんでした。
泣きそうでした。
集合に遅れてしまったことは
良いこととは言えません。
でも、
ゆう子さんは、私にあげるための貝殻を
探してくれていたのです。
きれいな貝殻がみつかるまで。
遠足はグループ行動が基本なのですが
最初はちょっとだけと思ったのでしょう。
でも
砂浜は砂が多くて
貝殻はそれほどたくさんは落ちていなくて。
だから知らず知らずのうちに
少しだけ離れてしまって・・・
私は
理由も聞かずに
頭から叱ろうとしていた自分が恥ずかしかった。
もう少しでゆう子さんの優しい気持ちを
踏みにじってしまうところでした。
以来
子どもたちが何か良くないことをしてしまった時は
まず最初にその理由を聴くことを心掛けてきました。
子どもって
いろんなことをやっちゃいます。
良くないことはちゃんと叱ることはとても大切です。
あなたのお子さんも
叱られるようなことをしてしまったかもしれません。
ですが、
その前にぜひ
その行動を起こしたわけを聴いてあげてほしいのです。
私もいっぺんに
一度もかかさず理由を聴くことはできなかったかもしれない。
あなたも
これから全部は聴くことができないかもしれません。
でも
完璧でなくてもいいんです。
あなたはロボットじゃない。
人間だから。
最初は、百回のうち一回からでもいい。
子どもの声に耳を傾けてあげてください。
そこに、
お子さんの優しい気持ちが隠れているかもしれない。
私はそう思うのです。
今日は
子どもたちの良いところを見つけられるようにするために
まずは
子どもの声に耳を傾けようというお話でした。
今でもあの時のゆうこさんの顔と
小さな可愛い手は
はっきりと
覚えています。
そのほおは貝殻と同じ
やさしいやさしい
ピンク色でした。
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編集後記
宝物ファイルプログラムの中に
自分の夢を書くというワークがあります。
「サッカー選手になりたい」
「ケーキ屋さんになりたい」
などなど
子どもたちって思い思いの夢を書きます。
ある時
「お金がほしい」
と書いていた男の子がいたので
「お金は何に使いたいの?」
と聞きますと
にこっと笑って
「お父さんはお母さんに家を建ててあげたいです。」
と答えたのです。
くーっ、泣けるぅ。。。
子どもってやっぱりやさしいですねぇ。。。
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