朝から担任も泣いた母親のメッセージ
「子どもたちが便箋を持って帰りますので,お子さんのいいところを書いてあげてください。」と。子どもたちは,思い思いに便箋を持って帰りました。
三日後くらいだったでしょうか。ある男子が持ってきた物。
それは,彼のいいところがびっしりと書かれた5枚の便箋でした。全部で10個書いてありました。便箋5枚に10個ということは,一つについて詳しく書いてあるということで。こんなふうに・・・
「まず一つ目は,いつまでもくよくよしない点です。
言い換えれば,気持の切り替えをいい方向に早くできることです。
例えばあることで自分の思うようにいかなくて,その時は悔しくて泣いたり,落ち込んだり,
その悔しさや落ち込んだ気持ちを乗り越えて,早くに気持ちを切り替えられます。
マイナスなことでも,プラスにとらえようと気持を前向きにできるともいえます。
これは,これから中学生,高校生,そして大人になっていく上でとても大切なことだと思います。
あきらめるとかいう単純なことではなく,良い方に物事を考えていける人間になる第一条件だと思います。
一言で言えば楽天主義。これは簡単そうですが,なかなかできない。
Dはいつもこれができるので,いつもすごいと感心しています。二つ目は,待つことができることです。待つことには,時間の待つことと心の待つことの両面がありますが,
特に心の待つことができるところがいいです。
どんなに欲しいものでも,家族や友達のことを考えて待つことができます。
やさしい気持ちがないと相手を思いやることができないので,とてもいいところです。三つ目は,四つ目は・・・(中略)
六つ目は,これはおじいちゃんからですが,(中略)」
と,お母さんはおじいちゃんの分も代筆されていた。
そして,10個目が終わったその後に,一行の文が書かれていました。それは,こんな文でした。
「最後に,〇〇(名前)がお母さんの子供であったことが,一番いいところです。」
私は,この一行を読んで朝の教室で涙が止まらなくなりました。私は,教師という仕事はしているが,
決して立派な母親ではありません。それどころか,失敗の方が多いくらいです。
娘が保育園の時,仕事から帰ると,悲しそうな顔をして私を見上げていたことがあります。
「どうしたの?」
「お母さん,今日,お弁当の日だった・・・。」
「えっ!?(絶句)」
なんと,娘の保育園のお弁当の日を忘れているような母親でした。また,クラスの子が,
「先生,この算数の問題わかりません。」
と言って聞きに来ると,
「そうか。先生の説明足りなかったね。ごめん,ごめん。」
と心から反省する自分がいるのに,わが子が,
「お母さん,この問題教えて。」
と持ってくると,頭の中に,「えっ,こんな問題もわからないの?」と浮かんでしまうのです。
やり取りの中にも次第にそれが出てきてしまい,厳しい口調になることがほとんどでした。
「もういい!お母さんになんか聞かない。」
そう言って部屋へ駆け込むわが子の背中を見ながら,
「しまった。なんでもっと優しくおしえてあげられなかったのだろう。」と後悔ばかりしてきました。
そんな,母親ですがが,「あなたが子供でうれしい。」ということだけは,
わが子に伝えてから死にたいとそのお母さんから教えてもらいました。