心のわだかまりがなくなったら見慣れた景色まで違って見えた(40代男性)
「は? 父親との思い出はほとんどありません。ぼくは母に育てられましたから」
お父さんのことを振り返るセッションをしているとき、
山田さん(仮名)は憮然とした表情でそうおっしゃいました。
お話をお聞きしますと、彼が小学校高学年のときにご両親は離婚されたとのこと。
かれこれ三十年くらい前のことです。以来お母さんに育てられたので、
お父さんのことはあまり覚えていないというのです。
その後お父さんから「妹ができたから会ってくれないか」 と連絡が来たそうですが、
「何を今さら」と断ったそうです。そして、
「それ以来、父とは二十年以上もずっと会っていないし、どこにいるかも知りません。会いたくもありません」
とおっしゃっていました。
そんな中、宝物ファイル講座は進んでいきました。最後にメッセージを書くセッションが始まりました。
山田さんは一枚書いては便箋をクシャクシャと丸め、また一枚書いてはクシャクシャと丸めていました。
それを数回繰り返して、ようやく一枚書き上げたかと思ったら、それもやはりクシャクシャにしてしまいました。
そして、次にもう一枚便箋を取って書き始めました。今度は筆が進んでいます。
途中からスピードが速くなり、彼の目から涙が流れ始めました。夢中で書き上げた四枚の便箋。
文字で埋め尽くされたその便箋を封筒に入れて、ふうーっと大きく息を吐きました。
「誰に書いたのですか?」私が聞くと「父親です」との返事でした。
講座が終わり、帰りに山田さんに車で東京駅まで送ってもらいました。その車の中での会話です。
「岩堀先生、今日はまさか自分が最後のセッションで父親にメッセージを書くとは思いませんでした。
最初は母親に書こうと思ったのですが、何度書いても書けないのです。そ
れで、自分でもわけがわからないのですが、気がついたら父親に書いていました」
「そうでしたか」
「それでね、今はとってもすっきりした気分なんですよ。今度もしも父親から連絡が来たら
会いたいなぁって思います。というか、連絡来ないかなぁ……」
そう話す彼の横顔は本当にすがすがしい感じがしました。話しながら車は進み、東京駅が見えました。
すると、彼が突然、「今日の東京駅、いつもと全然違う! すごく堂々として見える!」と叫んだのです。
「えっ、本当ですか?」
「はい、何度もここを車で通りましたが、こんなに東京駅が
堂々と威厳を持って見えたのは初めてです! 不思議ですっ!」
自分の心の中でずっと蓋をしてきたわだかまりがなくなったとたんに、見える景色まで変わったのです。
後日、山田さんにお話をお聞きすると、
「あのとき、宝物ファイル講座を受講する中で、自分の中で『許す』ということができたのだと思います。
胸のつかえがとれて、すっきりしました」とおっしゃっていました。 人の行動の中で、「許す」ということが一番難しいのではないかと私は常々思っています。
長年自分の心の中で許せなかった父親を許すことができたとは、なんと凄いことでしょう。
私自身も山田さんを見て人間が持っている力のすばらしさを改めて学ばせていただきました。
「許す」ということは、口で言うほど簡単なことではないかもしれません。
でも、人には無限の可能性があります。誰しもきっかけがあれば、
『許す』ことができるのではないかと私は思います。
そして、それによってわだかまりがなくなると、人生が大きく開けるのです。
今、山田さんの宝物ファイルの中には、お父さんへの思いをしたためた四枚の便箋が入っています。
いつお父さんと再会してもいいように……。
お父さんのことを振り返るセッションをしているとき、
山田さん(仮名)は憮然とした表情でそうおっしゃいました。
お話をお聞きしますと、彼が小学校高学年のときにご両親は離婚されたとのこと。
かれこれ三十年くらい前のことです。以来お母さんに育てられたので、
お父さんのことはあまり覚えていないというのです。
その後お父さんから「妹ができたから会ってくれないか」 と連絡が来たそうですが、
「何を今さら」と断ったそうです。そして、
「それ以来、父とは二十年以上もずっと会っていないし、どこにいるかも知りません。会いたくもありません」
とおっしゃっていました。
そんな中、宝物ファイル講座は進んでいきました。最後にメッセージを書くセッションが始まりました。
山田さんは一枚書いては便箋をクシャクシャと丸め、また一枚書いてはクシャクシャと丸めていました。
それを数回繰り返して、ようやく一枚書き上げたかと思ったら、それもやはりクシャクシャにしてしまいました。
そして、次にもう一枚便箋を取って書き始めました。今度は筆が進んでいます。
途中からスピードが速くなり、彼の目から涙が流れ始めました。夢中で書き上げた四枚の便箋。
文字で埋め尽くされたその便箋を封筒に入れて、ふうーっと大きく息を吐きました。
「誰に書いたのですか?」私が聞くと「父親です」との返事でした。
講座が終わり、帰りに山田さんに車で東京駅まで送ってもらいました。その車の中での会話です。
「岩堀先生、今日はまさか自分が最後のセッションで父親にメッセージを書くとは思いませんでした。
最初は母親に書こうと思ったのですが、何度書いても書けないのです。そ
れで、自分でもわけがわからないのですが、気がついたら父親に書いていました」
「そうでしたか」
「それでね、今はとってもすっきりした気分なんですよ。今度もしも父親から連絡が来たら
会いたいなぁって思います。というか、連絡来ないかなぁ……」
そう話す彼の横顔は本当にすがすがしい感じがしました。話しながら車は進み、東京駅が見えました。
すると、彼が突然、「今日の東京駅、いつもと全然違う! すごく堂々として見える!」と叫んだのです。
「えっ、本当ですか?」
「はい、何度もここを車で通りましたが、こんなに東京駅が
堂々と威厳を持って見えたのは初めてです! 不思議ですっ!」
自分の心の中でずっと蓋をしてきたわだかまりがなくなったとたんに、見える景色まで変わったのです。
後日、山田さんにお話をお聞きすると、
「あのとき、宝物ファイル講座を受講する中で、自分の中で『許す』ということができたのだと思います。
胸のつかえがとれて、すっきりしました」とおっしゃっていました。 人の行動の中で、「許す」ということが一番難しいのではないかと私は常々思っています。
長年自分の心の中で許せなかった父親を許すことができたとは、なんと凄いことでしょう。
私自身も山田さんを見て人間が持っている力のすばらしさを改めて学ばせていただきました。
「許す」ということは、口で言うほど簡単なことではないかもしれません。
でも、人には無限の可能性があります。誰しもきっかけがあれば、
『許す』ことができるのではないかと私は思います。
そして、それによってわだかまりがなくなると、人生が大きく開けるのです。
今、山田さんの宝物ファイルの中には、お父さんへの思いをしたためた四枚の便箋が入っています。
いつお父さんと再会してもいいように……。