ずっと避けてきた母親との確執がなくなった五十代の女性
宝物ファイルで変わったのは子どもだけではありません。
あるとき、大人版宝物ファイル講座に参加してくださった五十代の女性が、
「おかげさまで母との関係がとてもよくなりました」とおっしゃいました。
その女性はずっとお母さんとの関係がうまくいかなくなっていたそうです。
詳しくお聞きますと、次のようなお話をしてくださいました。
*
小学校に入る前から、母にはいつも叱られてしました。「洗濯物を取り込んでね」と言われて
少しでもぐずぐずしていると、「早くしなさい。取り込んでって言ったのに何やってるの」と言われて、
手をあげられたりお腹を蹴られたりしました。そのときは、ここはじっとしていたほうが
早く終わると思って、されるがままになっていました。
小学生のときは、いい子でいなくちゃ、お母さんに気にいられるよう優等生でいなくちゃと思い、
自分を出せませんでした。なんでもてきぱきできるほうではなかったのでいつも怒られてばかりで、
こんなに怒られる自分はダメなんだと思い込んでいました。
あるとき、背中を棒でたたかれました。背中がかっと燃えるように熱くて
火がついたのではないかと思うほど痛かったです。そのとき、初めて、
母親に対する怒りや憎しみが出てきましたが、何もできませんでした。友達にも言えませんでした。
父親は自営業で、工場で遅くまで働いて、帰ってくると食事をしてお風呂に入って寝るだけでしたので、
私が母からこんなにたたかれているとは知らなかったと思います。
高校に入っても、母の暴言や暴力は続きました。「死んでしまえ」と言われて、
土下座で謝らされたこともありました。高校三年生でストレスが原因で体調不良となりました。
病院の先生に、「このままだったらあなたは死んでしまうから、早く入院してください」と言われて、
四か月間入院しました。やっと母から離れられるとホッとして救われた気持ちになりました。
一年間自宅療養して、大学は迷わず県外に行きました。このときもまた、やっと解放されたと思いました。
この頃から、私は家に帰りたくないと少しずつ意思表示できるようになりました。
母親もそんな私を少しずつ心配してくれるようになりました。卒業して三年後に結婚したので、
また母から離れました。母親は、嫁入り支度や赤ちゃんの世話をしてくれました。
孫が生まれて態度が前よりは優しくなったように感じました。母に対する憎しみはまだありましたが、
頼らざるを得ないので、少しずつ慣れていきました。
自分で子どもを育ててみると、母親も子育てに大変だったのかなと思うようになりました。
でも、子どもの頃からの辛かった思いは誰にも言えませんでした。この憎しみは自分で解放しなくちゃ、
と思うようになりました。衝突することはあっても、私が母親を許してもいいんじゃないかと
気持ちが少しずつ変わり始めてきました。
五十歳を過ぎて、カウンセリング協会に通うようになりました。
そこで、講師に岩堀先生がいらっしゃることを知りました。岩堀先生のことは
以前から新聞記事などを読んで知っていたので、講座を受けてみたいと思いました。
でも、あの講座で、子どもの頃のことを振り返ったとき、自分のどろどろした葛藤をまさか
さらけ出せるものとは思っていませんでした。最初は、「私、これ、書けるだろうか」と思いました。
今までの自分だったら、つくろって当たり障りのないことだけを書いて話していたと思います。
でも、そのときは正直な気持ちを書き、話すことができました。
自分のことを自分以外の人に話したことは初めてです。言いたくなかったし、言えなかった。
いい子でいなくちゃと思っていたから……。
自分にとっては大きなチャレンジでした。
それを、グループのみんなが励ましてくれました。「よくがんばってきたね」と言って。
それまでは、いくら人から褒められても、お世辞だと思っていました。
「自分なんか大した人間じゃない」と自分で否定して、素直に受け止められませんでした。
親の感情で自分を判断していたんですね。自分というものはなくて、
自分の感情がどこにあるかわからず漂っていて、親に占領されていました。
結婚して子どもを三人産んでも自分に自信がなくて、友達に合わせることが多くて疲れていました。
しかし、この宝物ファイルベーシック講座で人から「よく頑張ったね」と言われたときは、
気持ちがすっきりしました。もやもやと自分の心の中にあったものをはっきり形にできたことで、
ワンステップ進んだように感じました。自分で自分を褒められない私にとっては、
人から認められたことは大きな励みになりました。
自分はがんばってきたんだから、自分で褒めていいんだと思いました。
知らず知らず涙が溢れてきたのですが、みんなが受け止めてくれました。
*
「そうでしたか」
話を聞き終えてからそう言うと、彼女は言いました。
「はい。そして、その後、驚くことが起きたのです」
「どんなことですか?」
「昔は、あれほど母親のことを憎くて辛くてしょうがなかったのに、
今はスイッチを切り替えないと思い出せないくらい、意識の外、忘却の域にある感じなんです。
今、話していても胸は痛みません。そういうこともあったんだなあと思えます。
講座で形にできたので心の整理ができたのだと思います。
それを人に伝えることでみんなに認めてもらって、またすっきりできました。
自分は自己肯定感を持っていいんだと自分を認めることができました」
長い間抱えていた辛い気持ちがなくなったことは本当にうれしい、と彼女は喜んでいました。 両親がいなければ今の自分は存在しません。両親との関係がうまくいかない。
考えたくないから蓋をして生きる人生と、心から感謝の心を持って仲良く生きて、
ますます力を発揮する人生。ぜひ後者を選んでいただきたいと思います。
あるとき、大人版宝物ファイル講座に参加してくださった五十代の女性が、
「おかげさまで母との関係がとてもよくなりました」とおっしゃいました。
その女性はずっとお母さんとの関係がうまくいかなくなっていたそうです。
詳しくお聞きますと、次のようなお話をしてくださいました。
*
小学校に入る前から、母にはいつも叱られてしました。「洗濯物を取り込んでね」と言われて
少しでもぐずぐずしていると、「早くしなさい。取り込んでって言ったのに何やってるの」と言われて、
手をあげられたりお腹を蹴られたりしました。そのときは、ここはじっとしていたほうが
早く終わると思って、されるがままになっていました。
小学生のときは、いい子でいなくちゃ、お母さんに気にいられるよう優等生でいなくちゃと思い、
自分を出せませんでした。なんでもてきぱきできるほうではなかったのでいつも怒られてばかりで、
こんなに怒られる自分はダメなんだと思い込んでいました。
あるとき、背中を棒でたたかれました。背中がかっと燃えるように熱くて
火がついたのではないかと思うほど痛かったです。そのとき、初めて、
母親に対する怒りや憎しみが出てきましたが、何もできませんでした。友達にも言えませんでした。
父親は自営業で、工場で遅くまで働いて、帰ってくると食事をしてお風呂に入って寝るだけでしたので、
私が母からこんなにたたかれているとは知らなかったと思います。
高校に入っても、母の暴言や暴力は続きました。「死んでしまえ」と言われて、
土下座で謝らされたこともありました。高校三年生でストレスが原因で体調不良となりました。
病院の先生に、「このままだったらあなたは死んでしまうから、早く入院してください」と言われて、
四か月間入院しました。やっと母から離れられるとホッとして救われた気持ちになりました。
一年間自宅療養して、大学は迷わず県外に行きました。このときもまた、やっと解放されたと思いました。
この頃から、私は家に帰りたくないと少しずつ意思表示できるようになりました。
母親もそんな私を少しずつ心配してくれるようになりました。卒業して三年後に結婚したので、
また母から離れました。母親は、嫁入り支度や赤ちゃんの世話をしてくれました。
孫が生まれて態度が前よりは優しくなったように感じました。母に対する憎しみはまだありましたが、
頼らざるを得ないので、少しずつ慣れていきました。
自分で子どもを育ててみると、母親も子育てに大変だったのかなと思うようになりました。
でも、子どもの頃からの辛かった思いは誰にも言えませんでした。この憎しみは自分で解放しなくちゃ、
と思うようになりました。衝突することはあっても、私が母親を許してもいいんじゃないかと
気持ちが少しずつ変わり始めてきました。
五十歳を過ぎて、カウンセリング協会に通うようになりました。
そこで、講師に岩堀先生がいらっしゃることを知りました。岩堀先生のことは
以前から新聞記事などを読んで知っていたので、講座を受けてみたいと思いました。
でも、あの講座で、子どもの頃のことを振り返ったとき、自分のどろどろした葛藤をまさか
さらけ出せるものとは思っていませんでした。最初は、「私、これ、書けるだろうか」と思いました。
今までの自分だったら、つくろって当たり障りのないことだけを書いて話していたと思います。
でも、そのときは正直な気持ちを書き、話すことができました。
自分のことを自分以外の人に話したことは初めてです。言いたくなかったし、言えなかった。
いい子でいなくちゃと思っていたから……。
自分にとっては大きなチャレンジでした。
それを、グループのみんなが励ましてくれました。「よくがんばってきたね」と言って。
それまでは、いくら人から褒められても、お世辞だと思っていました。
「自分なんか大した人間じゃない」と自分で否定して、素直に受け止められませんでした。
親の感情で自分を判断していたんですね。自分というものはなくて、
自分の感情がどこにあるかわからず漂っていて、親に占領されていました。
結婚して子どもを三人産んでも自分に自信がなくて、友達に合わせることが多くて疲れていました。
しかし、この宝物ファイルベーシック講座で人から「よく頑張ったね」と言われたときは、
気持ちがすっきりしました。もやもやと自分の心の中にあったものをはっきり形にできたことで、
ワンステップ進んだように感じました。自分で自分を褒められない私にとっては、
人から認められたことは大きな励みになりました。
自分はがんばってきたんだから、自分で褒めていいんだと思いました。
知らず知らず涙が溢れてきたのですが、みんなが受け止めてくれました。
*
「そうでしたか」
話を聞き終えてからそう言うと、彼女は言いました。
「はい。そして、その後、驚くことが起きたのです」
「どんなことですか?」
「昔は、あれほど母親のことを憎くて辛くてしょうがなかったのに、
今はスイッチを切り替えないと思い出せないくらい、意識の外、忘却の域にある感じなんです。
今、話していても胸は痛みません。そういうこともあったんだなあと思えます。
講座で形にできたので心の整理ができたのだと思います。
それを人に伝えることでみんなに認めてもらって、またすっきりできました。
自分は自己肯定感を持っていいんだと自分を認めることができました」
長い間抱えていた辛い気持ちがなくなったことは本当にうれしい、と彼女は喜んでいました。 両親がいなければ今の自分は存在しません。両親との関係がうまくいかない。
考えたくないから蓋をして生きる人生と、心から感謝の心を持って仲良く生きて、
ますます力を発揮する人生。ぜひ後者を選んでいただきたいと思います。